東京・埼玉の水を送り出す拠点「利根大堰」利根大堰は、利根川を堰止めて、農業用水や都市用水をまとめて取水し、目的別に水を送る導水路の拠点です。取水口は利根川が右岸側に大きくカーブしている所に設置されています。カーブの外側は水の流れが速いので水を取り込みやすく、砂も少ないからだそうです。取水口で取り込んだ水は幅の広い「沈砂池」に送り、流れをゆるやかにして土砂などを沈殿させます。そしてそこに目的地別に水を送り出す「分水工」があります。事務所屋上から見下ろして、正面の右から「見沼代用水路」、東京と埼玉の水道用水や工業用水、隅田川の浄化用水を送り出す「武蔵水路」、その隣に葛西用水などの農業用水用の「埼玉用水路」があって、両脇に「行田水路」と「邑お楽ら用水路」があります。この中で、見沼代用水路と埼玉用水路、邑楽用水路が農業用水の導水路で、八つの農業用水をまとめて取水し、それぞれの供給地に導水しています。水資源機構が管理している利根大堰からの用水路を全部足すと、約一四〇㌔㍍もあって、埼玉全農地(水田)面積の約半分を占めているそうです。また、利根川と荒川を結ぶ「武蔵水路」は、都市用水を送るだけではなく、大雨のとき、この周囲一帯の排水を受け入れる役割も果たしています。利根大堰から出ていく導水路の状況は、操作室にある大きなグラフィックパネルに表示されます。人気のない大きな操作室にグラフィックパネルの流量を示す数字だけが光る光景は、何か不具合があれば警告音が鳴るようになっているそうですが、ちょっと不安に思いました。その一方で、利根川の水を取り入れる取水口では大きな重機でゴミや土砂などの除去を行なっていました。分水工などの細いところは人の手で取り除くそうで、このような作業は天候や夜間などに関係なく行なっているそうです。ほかにも、水路の点検では水を止めてコンクリート壁の耐久調査を行なったり、地域の清掃活動もしたり、操作室で働く人が一人だけというのは、ほかに人手のかかる作業がいっぱいあるからなのだろうなと思いました。なお、利根大堰は高低差が大きく魚が登れないので、堰の右岸側に魚道がつくられていて、魚道の観察室では、春であれば数万匹のアユが、秋になればサケが見られるそうです。埼玉用水路武蔵水路見沼代用水路利根大堰邑楽導水路う利根川 ➡取水口利根導水総合事業所沈砂池行田水路邑楽用水路18
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