水は流れている、つながっている2
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山に降る雨が沢の水になるまで午前一〇時から秩父農林振興センターで、山に水が溜まる仕組みを聞きました。山の土壌は、林床から基岩盤まで、特徴ある四つの層で構成されています。《A0ぜ層》は「落葉層」とも呼ばれ、森林の落ち葉や落ち枝が堆積した層です。ここは目の粗いスポンジのような層で、林床の水を地中に入り込みやすくします。《A層》はA0層の落ち葉や落ち枝が微生物によって分解され、大小の土の塊が混じり合う(団粒構造)、隙間がたくさんある層です。A0層よりもう少し目の詰まったスポンジの役割をして、水をたっぷり含みます。《B層》は団粒構造の土の粒がさらに固まって、粘土のようになった少し硬い層です。ここはもっと目が詰まったスポンジで、ゆっくりC層に水を送ります。《C層》は山の骨格を作っている岩盤が浸透してきた雨水や圧力で破壊され、礫れになり、それと土が混じった隙間のある岩盤層です。A0からこのC層までを「森林土壌」と言います。ろ きその下の隙間のない岩盤は水を通さない「不透水層」なので、林床からゆっくり浸透してくる水は、今度は横流れして、崖などから浸み出てきます。これが湧水です。この湧水が沢になり、沢が集まって川になります。ここで気づいたことは、森林土壌と平野の地層に違いがあることです(『文集Ⅰ』P22参照)。平野の表層土は固いけれど山にはふかふかの落葉層があること。表土と粘土層の間に、山には団粒構造のA層があることです。この構造の違いと山は大きいことが、川の水源になるのだろうと思いました。森林土壌を水が流れる速度は、一日で数センチ、速くても数メートル以下だそうです。ゆっくり流れるから森林土壌に保水されるのですが、よく言われる針葉樹林より広葉樹林の方が保水力が高い、と言われることについて聞きました。一ha当たりの保水量を調べると、はげ山=二一七〇㎘針葉樹林=三二三〇㎘広葉樹林=三三八〇㎘で、針葉樹林も広葉樹林もさして差はなかったそうです。どちらも微生物が分解するので差がなくなるのかもしれません。しかし樹林がないと、雨水が表土に当たり、土の粒を押し固めるので地中に浸透しなくなります。すると地表を流れるようになり、その時土ごと削られると「表面侵食」を起こし、■森林の構造■山の保水力の違い18

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