体験を共有して未来を考えること「くるる調査隊」のみなさん、みなさんの素敵な調査報告を楽しく読んでいます。みなさんが一所懸命調べて考えた内容がとてもわかりやすく書かれているので、私も本当に多くのことを改めて学んでいます。私だけでなく、きっと多くの人がたくさんの気づきを得ながら読み進めているでしょう。前回の調査結果も楽しいものでした。今回、さらに「水はどこに流れて行くのか」など、調査の対象が拡がってきたことは素晴らしいと思います。みなさんの文章は、調査の結果だけではなく、調査しているときの体験も書かれているので、自分もその調査に参加しているような気持になり、より理解が深まりました。私の体験からしても、自ら調べたことや、このように調べた体験も含めて読ませてもらったことはしっかりと記憶に定着するようです。沼田んぼ」周辺の地域で育ちました。小学校は浦和市立(いまはさいたま市ですね)上木崎小学校、中学校は大原中学校です。も小学校のときに調べたことを思い出しました。にも使われていましたが、見沼代用水東縁べ・西縁と真ん中を流れるさて、私はさいたま市内にある「見みなさんの調査を読みながら私見沼代用水と芝川はともに水運芝川では水位が異なっていて、そのままでは行き来できません。そこで作られたのが「通船堀」で、その仕組みはパナマ運河と同じ閘門式というものでした。ということを現地に行ったり、いろいろな人に話をお聞きして、郷土に有名なパナマ運河と同じ仕組みのものがパナマ運河よりも早くできていたことが自慢に感じられました。ただ、現地にいくと小さな流れがあるだけで堰止める施設も痕跡しかなく、船が行き来したことが信じられないような気もしました。その後、大人になって農林水産業や地域の発展についての仕事をするようになり、物を運ぶのにトラックなどが使われるようになってきたこと、水の利用そのものについてもいろいろな用途に使うために地域によっては水量が減っていることなどを知りました。多くの人々が暮らす日本において最も大切なことの一つは食料の安全保障です。海外からの輸入をしっかりとしたものにしたり、備蓄をすることも大切で、私も国際的な会議でいろいろな議論をしたり、輸入の体制づくりの仕事もやってきましたが、何よりも大切なことはしっかりとした国内生産を確保していくことです。そのためには農地と水をしっかり確保すること、農業生産の技術を持ち続けることが大切で、そのために政府としてもいろいろな対策を講じています。農業用水を引いて農作物に水が与えられるようにする事業も重要ですし、農業の機械化なども大切です。それとともに国民みんなが農業の大切さについて理解することが重要なことだとされています。見沼代用水は江戸時代につくられたときも私が小学生のときも、そして今も流れ続けています。しかし、周囲の状況はだいぶ変化している面もあります。多くの人が住むための住宅や農業ではない仕事のための施設になったりして、現代の日々との暮らしを支え 東京農業大学教授 末松広行り 28
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