【サンプル】残したい・伝えたい 荒川 2000-2009
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4 川は古来、人間にとって神秘的な存在であり、豊かな恵みを与えてくれる場でもある。その反面、水害の脅威をもたらすこともある。 人は水なくして生きることはできない。太古の昔から人間は水を求めて河川の流域に集落を形成し、農耕を営んできた。また、魚を獲って食料としてきた。同時に川は交通の要路として重要な役割を担ってきた。今日のように鉄道網や道路網が整備される以前は、川船は人間を運び、大量の物資を一度に運ぶ交通の手段であった。また、川の流れる自然空間は美しく、見る人びとの心をなごませてくれる癒しの場でもあった。 荒川の流域にいつごろから人が住み始めたのか定かではない。しかし、荒川の源流郷である埼玉県最西端にある大滝村(平成の大合併で現在は秩父市大滝)の神庭洞窟遺跡からは、縄文時代草創期以降といわれる骨角器や土器が出土している。この川は埼玉、山梨、長野三県の県境に位置する甲武信岳(2,475m)に源を発し、長瀞の景勝地など秩父盆地を通過して関東平野を流れ、赤羽で荒川放水路(荒川本流)と隅田川に分かれて東京湾に注ぐ。全長173km、利根川につぐ関東第二の河川である。 私はその水源を訪ねたことがある。国道から林道に入り、車を降りて細い山道を歩くこと4時間(地元の人は半分の時間で歩く)、「荒川起点碑」に到着した。水源もさることながら、途中、崖から滲み出す雫が荒川に流れ込んでいくようす、激しく流れる渓流、落ち葉が沈殿するよどみ、倒木が渓流をまたぐ豪快な光景などが印象に残った。雨水を蓄え、途切れることなく荒川に水を供給す残したい、伝えたい、荒川の息吹き10周年記念写真集発刊に寄せて

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