【サンプル】残したい・伝えたい 荒川 2000-2009
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 5写真家るこの広大な原生林の荘厳な営みに、私は心から感動したのである。 荒川の流域面積は2,940平方km、どれだけの人びとが荒川の水とともに暮らしているのだろう。魚も虫も草木も荒川の水で生きている。まさに自然界は共生の世界である。水、人間、動物、植物が織りなす「荒川物語」が日々展開されているのである。 いま、地球規模での環境問題が論議されている。荒川といえども例外ではない。かつて日本経済が高度成長期にあった1960年代前半には、隅田川が工場廃水で汚染されて悪臭が漂い、ハンカチで口を覆わないと水上バスに乗っていられないほどであった。幸い、現在では改善されて、悪臭は消えている。 今年、「荒川を撮る会」が結成されて10年を迎える。それを記念して写真展の開催と写真集の出版が決まった。写真展は3年ごとに行っているので、この3年間の作品を展示する。写真集は10年間に撮影した4,000点の中から厳選した約300点をまとめた集大成となる。この会は荒川流域の自然環境の保全、伝統文化の保存を目的に、流域の生活を写真に記録し、後世に伝え残すことを目ざしている。21世紀の世界的な課題である地球の環境汚染、温暖化、水資源の確保等の問題を解消させて美しい自然、清らかな水源を子々孫々に伝え残す運動に一致しており、写真家にとってもやりがいのある仕事である。 写真を愛し、荒川をこよなく愛する写真家たちの「荒川物語」の成果を祝うとともに、「荒川を撮る会」の今後益々の活躍を期待する。

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